2023年05月18日
UCO キャンドルランタン ・ Early Winters ランタン
Early Winters Lanterns
こんにちは。
今回はUCO タイプのランタンを草創期から90年代までのモデルをメインにカタログなどを参考に辿ってみたいと思います。
1981年に登場する Early Winters のキャンドルランタン。
ユニークなものを誰よりも早く紹介する、ビル・ニコライ氏(William S. Nicolai)。
その EW は世界初の 「GORE-TEX」 製のテントなども作っています。
W.L. Gore & Associates 社から 「GORE-TEX 」ファブリックを購入した一番最初の企業でもあるようです。
82年夏カタログです、「Alpinist's Lantern」 (アルピニストランタン)はアルミ製、ブラス製そしてアルミ製 anodized(アルマイト加工)ブラックの3機種が紹介されます。
ブラックモデルは他のモデルとは数ヶ月ほど遅れて紹介されるようです。
ブラス製とアルミ製ブラックにはシルバー色のアルミプレート、アルミ製シルバーにはゴールドのプレートがそれぞれ貼られています。
ブラス製は本皮のケースとセットでの販売ですが、ケースのみのオプション販売もされます。
これらのランタン(ブラック以外)には購入時名前やメッセージ等の文字、イニシャル等のモノグラムを刻印するオプションも設定されていました。

モノグラム
刻印の施されたランタンは個性的でとても良い雰囲気を漂わせているように感じます。
83年秋冬カタログです。
この時期までのモデルはエンドキャップ(ベース)部分がこの後のものとはつくりが異なります。
本体と同じ素材のベースは3本の爪で固定するつくりです。
83年後期頃(84年モデルから)素材などが変更されます。
ベース部分がプラスチックになり、固定方法も仕様変更されています。
2本爪と呼ばれるつくりです、このベース部には下記の文字が記されます。
MADE IN USA BY UCO INC. PAT. PEND. MODEL NO 2
PAT.PEND.=PATENT PENDING=特許出願中 俗に言うパテペンです。
UCO INC.そして MODEL No 2 の文字も。
モデル No.2 があるなら No.1 もあるはずです。


80年代後期以降のプラスチックベースには PAT(パテント)ナンバーが記されています。
調べてみたところ・・・特許出願時の図面のようです。
ベース部分が3本爪タイプなのがわかります。*20と22と記された部分。
特許のことはよく分かりませんが、1982年8月に最初の出願がされているようです。
1984年8月の日付等も見られます。
1986年1月に特許の認可がおりたようで、付与された特許番号が記されます。
この時期に見られる特徴的なハンドルにも注目です。 *44と記された部分です。
金属ベースではハンドルがしっかりと固定されます。
特許申請のポイントでもあるようです。
他にも特徴的な部分が見られますが、これらのことからこの金属ベースのモデルが UCO MODEL No.1 であると思われます。
No.1 と思われるこのモデルは当初から EW が販売するために生産されたもの・・・
UCO 社がキャンドルランタンを製造するきっかけは EW にあったのだそうです。
図面左上に描かれているのは(Fig.5)ブランデーグラスを温めるためのアタッチメントです。
このアタッチメントはランタンとパデッドケースのセット、そしてブランデーグラスとパデッドケースなどをセットしたものも EW から販売されています。
プラスチックベースの No.2 モデルではハンドルの形状が変化し曲げ角度もきつくなりますが、金属ベースほどはしっかりと固定できません。
ハンドルは古いモデルの特徴的な大切なポイントです。
右 No.1* と左 No.2 を並べ比べてみると、ヒートシールド(天板)、フレーム(支柱)など全体的なつくりの違いが見られます。
UCO の特徴であるヒートシールドは No.1 では一段と強く主張しています。
No.1 では独立した支柱がヒートシールドと共にグローブ*を保持しています。とても手の込んだつくりです。
No.2 のフレームは支柱部分も一体になっています。
ガラス部分は当時添付される説明書では PYREX と記されています。
*『No.1 と思われるもの』は便宜上 No.1 と記します・・・
*グローブ UCOではチムニーと呼んでいますがガラス部分のことです。
これも No.2 と記された初期のモデルです。
LIMELIGHT PRODUCTIONS と記されたステッカーが貼られています。
*ライムライトプロダクションズ
1984年 A&F UCO No.2
日本国内では A&Fさんが「アルピニストランタン」という商品名で販売しています。
これは当時すでに流通していた EW の「アルピニストランタン」という商品名に倣ったものと思います。
ロゴステッカーに記される 「CANDLE LIGHT」 が このランタン本来の商品名のようです。
この時期も素材の違いでロゴステッカーの色も異なります、ブラスボディにはシルバー、アルミボディにはゴールドです。
LIMELIGHT PRODUCTIONS はUCO社のブランドのようです。
83年頃から REI などに供給しているのもこのブランドです。
UCO が自社のブランドで販売を始めるのはこの頃からと思われます。
ただ、米国内で流通する多くはやはり REI などの企業もの(OEM)と思います。*後述

間もなく?ロゴのデザインが変更されます、下の画像と比べるとデザイン、レイアウト等が似ているのが分かります。
炎の形も “U” に見えます・・・

90年頃からのロゴデザイン。
商品名が「CANDLE LANTERN」 になり現在にも続きます。
ロゴステッカーにも UCO の文字が見られるようになります。
初期のステッカーは透明感のあるゴールド色で淡い色合いのものが多いです。
販売時期によって濃淡、透明感の有る無しが見られます。
このロゴデザインは長期にわたり使われます、この炎も “U”に見えますね・・・
エンドキャップ(ベース)。
86年以降PATナンバーが記されますが同時に No.2 の文字は見られなくなりました。
過渡期と思われる80年代末期頃には MADE IN USA では無いパーツが装着されたものもあります*。
*何故か?台湾製、つくりにも若干の違いが見られます。
目立たない部分ですが、時代と共に変化していきます。
80年代後期から90年代中期に見られるハンドルです。
三代目となるこのハンドルはシンプルな形状です。
この時代まではハンドルの形状でおおよその年代は推測できます。
90年代中期以降から現在のハンドルです。
時期によって微妙な形状の違いが見られます。
基本的に吊り下げチェーンは付属されます。
ヒートシールド。
No.2からの一時期、爪部分が二股になっています、グローブを支えるためです。
縦に3本延びるフレーム(支柱)も下部でグローブを保持しています。
80年代末頃~現在のヒートシールドです。
No.2 以降90年代中~後期頃までのフレーム。
3本の支柱先端の爪が内側を向きグローブを保持します。
古いモデルの場合グローブは固定されているため、点火の際は底部からキャンドルを取り出して行います。
90年代中~後期以降、現在のフレーム支柱部です。
支柱先端部分の爪が外側を向き、グローブが上下にスライドするようになりました。
このことで点火やメンテナンスがしやすく進化しています。
↓ここからは90年代以降の輸入代理店さんのカタログを紹介します。
製造された時期を特定するのは困難ですが、ステッカーやカラーでおおよその年代を推測することは出来ると思います。
カタログの写真が常にリアルタイムの商品ではありません、あくまでもおおよそです。
94年 A&F
この頃まではブラス製とアルミ製の2機種のラインナップです。
おそらく80年代のうちにゴールド色のキャンドルホルダー(インナー)が登場します。
このゴールド色、当初は「うっすら」とでしたが徐々に濃くなっていきます。
ゴールド色のキャンドルホルダーはブラス製をはじめ様々なモデルにも装着されます。
96年 A&F
95年頃カラーのランタンが新たにラインナップに加わります。
カラーランタンは枠なしの四角いロゴステッカーです。
リフレクター等のアクセサリー類も増えています。
90年代中期から2000年代初期のカラーモデルに貼られる枠なし角ステッカー。
98年 A&F
ミニティーライトランタン(ミニキャンドル)やキャンドリアも掲載されます。
この年からA&Fさんのカタログに UCO の文字が見られるようになります。
一般的に国内で『UCOランタン』*と認知されるのはミニキャンドル、キャンドリアが販売されるこの頃からと思います。
*同社の公式ページによると UCO = “you-co” の発音が正しいようです。
ただ『ユーコ』と広く呼ばれるようになるのはもう少し先、2000年代になってからだと思います。
これは日本に限らず米本国でも同様だったようで、『U・C・O』と呼ぶ米国人も意外と多いようです。
2003年 モチヅキ
この数年前(90年代末頃)から代理店となっているモチヅキさんのカタログです。
LED ランプがエンドキャップに組み込まれる「デュオ」がラインナップに加わります。
カラーモデルは枠無しステッカーのままですが、「デュオ」はカラーモデルにもゴールドの楕円ステッカーが貼られます。
このLEDランプは長めのハンドルとセットでオプション販売もされています。
カラーモデルにイエローとブルーが追加されています。
2004年 A&F
「デュオ」モデル以外のカラーモデルにも楕円ステッカーが貼られるようになります。
楕円のステッカーにはシルバー色もありますが、ゴールド色が圧倒的に多いです。
この時期のゴールドステッカーは色が濃いように感じます。
ステッカーの色の違いは特に規則性は無いようです。(ブラス製以外)
LEDモデルのオレンジカラーは2年ほどのラインナップでした。
カラーモデルに装着されていたゴールド色のキャンドルホルダーがシルバー色になります。

BY UCO CORPORATION と記されたシルバー色のステッカー。
このタイプのステッカーは少ないかもしれません。
2007年 モチヅキ
2000年代中期、アルミモデル、カラーモデルの楕円ステッカーがシルバー色に統一され、記された文言も変化しています。
旧= BY UCO CORPORATION
新= candlelantern.com
これは、UCO社の社名変更が関係していると思います。
2005年、それまでの UCO Corporation は Industrial Revolution,Inc. と社名変更します。
業務拡張に伴う組織変更のようです、同社では「大手企業に成長」と表現しています。
1971年にシアトル郊外で創業する小さな町工場は世界的な企業になりました。

2000年代中期からのロゴデザイン、ブラスモデルは BY UCO CORPORATION ゴールド色のままです。
2010年 A&F
A&Fさん扱い末期のラインナップです、2011年のカタログ掲載が最後でした。
繰り返しになりますがカタログ写真は使い回しの時期も多くリアルタイムではないことがほとんどです。
この事はA&F さん、モチヅキさん同様だと思います。
2011年 モチヅキ
レギュラーモデルに新色ホワイトが追加されます。
これ以降↓ ↓のカタログもモチヅキさんのものになります。
2014年
ケースやリフレクター等がセットになったキットシリーズが加わります。
キットシリーズは本体がハードアノダイズド(アルマイト)加工されています、小さくて四角いステッカーが貼られます。
レギュラーモデルに貼られる炎マークの楕円ステッカーはこの時期で終了します。
ブラスモデルは最後までBY UCO・・で始まる 炎マークのゴールドのステッカーでした。
2000年代以降このゴールドステッカーは様々なモデルにも貼られますが20年以上も使われたことになります。
ホワイトモデルはこの年で終了です。
2015年
レギュラーモデルもステッカーが四角になりました。
ブラックモデル、ブルーモデルがこの年で終了です。
この年の秋、2000個限定の本皮が巻かれたスペシャルエディションモデルが発売されます。
2016年
翌年にはステッカーが丸くなります。
キットシリーズはステッカーではなく本体にロゴがプリントされ、生産国が中国となります。
2010年代以降エンドキャップも何度かの変更がされているようです。
PATナンバーが省略~生産国の表示が省略~Made in China が表示など・・
2020年
前年まで米国製だったレギュラーモデル、キャンドリアなどのランタンはすべて中国製となりました。
この2020年のカタログがモチヅキさん最後の紙媒体カタログとなりました。
現在はウェブサイトからダウンロードするカタログです。
発売以来40年以上経過しますが、現在も基本的な構造は変わることなく、補修用パーツも販売が続けられています。
↓その他のOEMモデルのカタログ

1984年 L.L.BEAN UCO No.1
ヒートシールドはもちろん、ボディの色とロゴプレートの色にも注目です。
このカタログでもガラス部分は PYREX と紹介されています。
L.L.BEEN のキャンドルランタン、日本製フリップトップタイプは割りと多く目にしますが、UCO 製No.1はとても少ないです。
1993年 Cabela’s
よ~く見ると Cabela’s の文字が記されています。
1995年 REI
同じロゴでも販売時期によって部品構成が異なります、ハンドル、エンドキャップ、ヒートシールドなどの変化は上記で紹介した通りです。
REI モデル
このロゴのデザインは80年代中期 No.2 の頃から90年代中期まで見られます。
REI モデルとしては最初のステッカーデザインと思います。
長い期間作られているのでその時代によっての特徴が見られます。

90年代中期からのロゴ
REI にはこの他にもロゴデザインの変化、記念モデル、カラーモデルなど様々なものが存在します。
他にも販売する企業( Eastern Mountain Sports. など)、時代によって多くのロゴステッカーやプレートの種類があります。
ブラスモデルです。
ゴールド楕円ステッカーのブラスモデルは20年以上も販売されています、皆同じように見えますね。
90年代のモデルはハンドル形状、フレーム(ガラスのスライド)、ヒートシールドの取り付け位置など目立たない部分に相違点があります。
ブラス素材は時代によって質感、仕上げ等に違いが見られるのですが、独特の経年変化があるので見た目だけでの年代判別は難しいかもしれません。
概して新しい時代のステッカーは色合いが濃いように感じます。
個体差もあると思いますが、ベース部分などは古いモデルのほうがカッチリとしている印象です。
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UCO の歴史について Industrial Revolution 社のホームページからの抜粋です。
1971年 UCO 社設立。 当初はスキーブーツのバックル等の製造を行います。
1981年 キャンドルランタンを発表、同社初のヒット商品となります。
1982年 Pedco 社 ウルトラポッド発表。 カメラ用のミニ三脚*
1996年 ミニキャンドルランタン発表。
1998年 キャンドリア発表。
2005年 Industrial Revolution 社 と社名を変更。
2008年 Pedco 社*を買収。
2011年 マイクロキャンドルランタン発表。
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中略
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現在に至る

*Pedco のウルトラポッドも1982年の発表後間もなく EW から販売されています。
UCO の歴史には Early Winters が大きく関わっています・・・
EW では UCO 製ランタンを扱う以前は Le Grand Tetras 「フレンチアルピニストランタン」を販売しています。
目を凝らして見ていると・・・ここからアイデアが生まれたのかもしれませんね?
グランテトラのランタンは日本国内でも流通していました。

1980年 当時のグランテトラ代理店ダイワスポーツさんの広告です。
大きなステッカーが貼られる、後期タイプです。
同社はシュイナードなども扱っていました。
交換用グローブなども販売されています。これは主に後期モデルに装着されるPYREX のマークが印されたものです。
EW の「Light Mode-20」 キャンドルではありませんがキャンドルランタンを語るには欠かせないものです。
元々はレンサー社(Renser Industries) の「ウルトラライト」です。
上画像、本体両サイドにあるのはリペア用グローブです。*後述
84年頃登場しますが EW ではやはりいち早くラインナップに加わります。
ただ、この84年 EW は会社を釣具大手の「Orvis」社に売却してしまいます。
アウトドア企業としての活動は幕を閉じてしまいました。
ウルトラライトもこの後 NORTHERN LIGHTS のブランドになります。
日本国内でも飯塚カンパニーさんがいち早く取り扱いをしています*。
*84年からRenser Industries社と提携
93年頃、ウルトラライトのボディは樹脂製になりました。
ガラスグローブは金属ボディと樹脂ボディでは径が微妙に違います、樹脂ボディのほうがわずかに小さいです。
互換はできますが、きつかったり・・ゆるかったりします。
90年代中期の飯塚カンパニーさんのカタログです。
カラフルでかわいいランタンが多いです。

ノーザンライト のラインナップ。
フリップトップタイプには上画像のブラス、青以外にアルミ地、緑、赤がありました。
ノーザンライトのフリップトップタイプの販売期間は長くはありませんでしたが・・・
飯塚カンパニーさんオリジナルブランド「Wilderness ・ウィルダネス」ランタン。
「NORTHERN LIGHTS」と「Wilderness」「BIG OAK」「L.L.BEEN」・等々・・は『よく似ている』と言われますが、似ているのではなく『同じもの』だと思います。
フリップトップタイプの日本製(底部にMADE IN JAPAN刻印)ランタンの多くは元を辿るとここ(飯塚さん)に行き着くと思います。
このフリップトップランタンは80年代に金属ベースモデルでリリースされますが、後に(90年代)プラスチックベースに変更されます。
2002年 飯塚カンパニー
この時期、ブラス製は「ウィルダネス」ブランドですがアルミ製は「ノーザンライト」ブランドで販売されています。
*NORTHERN LIGHTS=ノーザンライツと書きますが、国内での商品名は「ノーザンライト」です。
A&Fさん 80年代に販売していたアルミ製ランタン。
当時のカタログではキャンドルランタン・とだけ紹介されていましたが・・・
KAMP-ZEEK 「Backpacker’s Candle Lantern 」です。
MADE IN U.S.A. の文字だけが刻印されます。
二重構造になっていて回転させるとガラス部分が隠れるようになっています。
使い勝手はあまりよくありませんが、厚手のアルミ素材なのでかなり頑丈です。
キャンドルはグランテトラ用と同じものを使えますがさらに短くする必要があります。
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UCO タイプのキャンドルランタンの魅力はポケットにも入るコンパクトさと燃料漏れなどの心配の少ないこと。
壊れる部分も少なく、簡単に扱えることです。
1キャンドルパワーのオレンジ色の自然な炎の揺らぎは心を落ち着かせてくれるものと思います。
もちろん、デメリットもあります。
メンテナンスが大変・・・キャンドルが高価・・等々・・
でも、工夫次第・・オイルインサートにする、仏壇用のローソクを加工するなどの方法もあります。
最近は純正アクセサリー以外にも様々なパーツも販売されているので、自分好みにカスタマイズすることも出来ますね。
ケース、キャンドル、オイルインサートなど・・・
私はキャンプで使うより家で点灯させてる時間のほうが長いかもしれません・・・
A&Fさん、モチヅキさん、飯塚カンパニーさんのカタログを参考にさせていただきました。
これがすべてではありません、憶測部分等もあり訂正、追記、削除等行うこともあります。
Jackson Browne with David Lindley Before The Deluge
それじゃあ・また・・・
☮️
Posted by mariokeisuke at 09:00
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